日本の暗く悲しい歴史、特攻……。誰しもが一度は見聞きしたことがあるこの歴史的事実についてあまりにリアルに、リアルすぎて読者の心をひりひりさせてしまうほどの筆で書かれた漫画、それが特攻の島です。
福岡海軍航空隊所属の渡辺裕三は、特殊兵器への希望調査に志願しある島(山口県大津島)に来た。そこで渡辺を待ち受けていたのは人間魚雷回天と、創案者の一人・仁科関夫海軍中尉であった。仁科中尉、上官との対話や衝突の中で回天という特攻兵器について、それに自らの命を懸けることについて真剣に考え訓練に没頭する渡辺。
やがて渡辺に出撃命令が下り、決して帰ることのないはずの出征を遂げた渡辺。彼はいかに自分の命を散らすのか……。
という内容。いや、もうこのあらすじだけでなんか息苦しくなるような、そんな切羽詰まった物語なのです。
特攻兵器・回天についてはあまり多く語る必要はないかと思います。特攻といえば航空機によるものが有名ですが、回天は魚雷を改造して人間が搭乗、操作できるようにした特攻兵器です。目的は自ら魚雷の目となって敵艦に突入すること。それが遂げられたら当然死、遂げられなくても回収は想定されていないので敵の爆雷にあたるか、それが無くても燃料切れで海底に沈むか……どうであれ一度出撃したら必ず死ぬ特攻兵器なのです。
詳細はネタバレになるので書けないのですが、渡辺はあっさり死ぬことはできません。極限状態の中で生きること、死ぬことについて何度も何度も考える場面が訪れます。それこそが特攻の島の見せ場なのです。
あと、渡辺の趣味は似顔絵を描くこと。当初は戦友の似顔絵を描いていたのですがいつからか自身の似顔絵を描き続ける渡辺。
渡辺の自画像が単行本の表紙になっていたりするのですが、巻が進むにつれて変わっていく渡辺の表情も、なにかこう訴えてくるものがあります。
ぜひぜひ、皆様も一度読んでみてください。今、生きていることの幸せを実感できること間違いなしです。
さて、山田には特攻の島への懐かしい思い出があります。
以前、今の会社の前に勤めていた某社会福祉法人への転職の際、面談がありました。
ある程度面接も終わったころ……。
面接官「さて、山田さんはお休みの日などどのような気分転換されていますか?」
ちょうどその頃、特攻の島を読み始めていた山田はこう答えました。
山田「最近は特高の島っていう漫画を読んでいます」
面接官「ほぉ、どんな漫画なんですか?」
山田「回天という特攻兵器に志願した人に関する漫画でして……」
山田は今も覚えています、あの時の面接官のひきつった顔を……。
ケアマネ的視点
・日本にはかつて、特攻兵器があった。
・そういった歴史を経て今がある。
・人間だって、過去があって今がある。