2000年公開の伝説の激暗映画、Top of鬱映画、胸糞映画of The King……なんだかんだ言って間違いなく映画史に残る傑作のひとつであるダンサー・イン・ザ・ダーク……。トレイラーはコチラ。
山田はほとんど初デートに近い状態でこれを劇場に見に行ってえらい目にあったいい思い出があります。
えらい目にはあいつつも心揺さぶれられた山田はDVDを購入するも、そのあまりの内容に見ることが怖すぎてたった一回しか見してなかったのですが、最近、とあるきっかけがあって生涯三度目の視聴をしました。
……やっぱり、名作です。すさまじい名作でした。
1960年代、アメリカのある町、チェコからの移民セルマは、息子ジーンと2人で暮らしている。
セルマは先天性の病気で徐々に視力が失われつつあり、今年中には失明すると告知されている。ジーンもまた、彼女からの遺伝により13歳で手術をしなければいずれ失明してしまう。セルマは昼夜なく懸命に働いていた。全てはジーンの手術代のため。
日々の辛い暮らしの中、ミュージカルの空想にふけることだけがセルマの救い。勤務先の工場の機械の駆動音、列車がレールを鳴らす音、それらもセルマにとってはミュージカルの素。
あともう少しで手術代が貯まる、という所でお金に困った隣人のビルがセルマの目がほとんど見えないのをいいことにお金を盗んでしまう。
お金を取り返そうとビルを尋ねるセルマ、返そうとしないビル、そのやり取りの中でしかたなくビルを殺害してしまうセルマ……。
やむにやまれない罪で収監されたセルマ、そしてジーンの行く末は……。
という内容。だいぶ省略していますが、ジーンのため懸命に働くセルマを見守り手助けする人がいる一方で、無情にも進んでいくセルマの視力の悪化と忍び寄るビルの魔の手、といったところの描写があまりに切なくて、苦しくて……事態が暗転し続けているのを見守るのは本当につらい。。
そういった観客を、そしてセルマを救うのが合間合間に挟まれるミュージカルシーン。これが本当に素晴らしい。
通常のカメラワークはドキュメンタリータッチのリアルさ最重視のものなのですが、ミュージカルシーンは一転、考え抜かれた美しい映像となっています。
この差は、ミュージカルシーン(=セルマの空想)が現実ではない、セルマにとっての幸せな瞬間、夢の別世界であることを表していると思います。
この映画で聞くことができるビョークが歌う楽曲は本当に素晴らしくて、とても印象的な物ばかり。その曲が素晴らしいほど、セルマが生きている現実の過酷さが際立っている構成もまた、観客の心を締め付けます。
また、山田がとても心惹かれたのが、セルマが収監された留置所の女性の看守。
髪の毛の色的にセルマと同じ東欧系であることを感じてさせる彼女、息子がいるという共通点もあり、看守という立場を超えてセルマに共感している姿がとても印象的。彼女が最後の最後までセルマを思い、支え、そして悲しんでいる姿がまた更に観客の心を締め上げます。
確かに暗い、重たい、救いのない映画です。でも、きっと最後にセルマが見ていた世界は美しいミュージカルの世界であったはず。セルマは、最後の最後で最高に幸せな瞬間を迎えられたことが確信できるラストシーンであり、そういった意味ではある意味ハッピーエンドな気もします。
2時間半ほどの長い映画ですが、人生の厚みを確実に増してくれる映画です。絶対おすすめ!
ケアマネ的視点
・人生はある意味無情な物。
・悪意はどこにあるか分からない。
・強く想い行動し続けければ、願いは叶う。