ケアマネの独り言

ケアマネ的映画鑑賞記 ~HANA-BI~

山田の侘しい人生の中で、大好きな映画Best5に常時ランクインしている作品、それが北野武監督の名作・HANA-BIです。トレイラーはコチラ

第54回ヴィネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞したことはあまりに有名。山田が評価するまでもなく、世界が評価した名作なのです。

 

子供を亡くし、不治の病に侵された妻(岸本加世子)を見舞う刑事・西(ビートたけし)。そんな中、同僚の堀部(大杉漣)が逃亡中の凶悪犯(薬師寺保栄)に撃たれ下半身不随となってしまう。駆け付けた西と部下の中村(寺島進)と田中(芦川誠)だったが、田中までも銃撃にあい命を落とす。大切なものを奪われ激高した西は何発もの弾丸を打ち込み犯人を殺害、その後、警察を退職する。

退職後、西はやくざからお金を借り生活するが返済が滞り始める。銀行強盗で借金を返済した後、西は妻を連れてあても終わりもない旅に出る。西を追う元部下の中村とやくざ達。西は次第に追い詰められていく……。

 

 

という話。静かな描写の中、二人が破滅に向かっていくストーリーは救いのないはずなのに所々出てくるくすりと笑えるシーンが映画全体の雰囲気を軽くしてくれます。

なによりこの映画、とにかく役者さんが最高。特に妻役の岸本加世子さんなくしてこの映画はあり得ません。そして若かりし頃のビートたけしさん。今は下町のおじいちゃん的な雰囲気ですが、この頃はぎらぎらとした輝きがあります。

妻はとても無口な性格。西も多くは語りません。それがいい……。

 

自身で夫婦の結末をつけるべく旅を続ける西と対照的に描かれるのが下半身不随となった堀部。

堀部は絵を描くことで再び自分を、生きる意味を見出していきます。

堀部は事故とそれに伴う退職により妻と子供に見限られ一人で暮らしています。そんな堀部に西が送ったのが画材。有り余る時間を絵を描くことでつぶし始める堀部は、次第に絵を描くことに没頭していきます。

死に向かっていく西と失った人生を取り戻そうとする堀部。

堀部の存在があるからこそ、西夫妻の死に向かい行く逃避行が切なく、美しく輝くのです。

 

さて、哀しくどこか微笑ましい西夫妻の旅路は、かつての部下である中村に追いつかれることで終わりを迎えます。

ここから、ここからのシーンがこの映画を名作至らしめているところ。

映画史に残る珠玉の名シーン。。

今まで何も語ることのなかった妻のたった二言わずか九文字の言葉が観客の心を揺さぶります。

もうこれは皆さんに見ていただくしかありません。山田は初めて見た時、涙が止まりませんでした。今見ても涙が出ます。本当にいいシーンです。救いはありませんが……。

 

北野武監督作品って、結構好き嫌いが分かると思います。嫌いな人は多分、北野作品からは切って切り離せないバイオレンス描写が嫌なんだと思います。

暴力描写に全振りした北野作品・アウトレイジより。

分かります。山田も別に彼の暴力描写が好きというわけではありません。それでも、HANA-BIにはそれを上回る良さがあります。

北野作品が苦手な方も、人生の二時間を山田に騙されたと思って一度、HANA-BIを見てみてください。ほぼ間違いなく、人生が少し豊かになります。絶対絶対おススメ!!

 

 

ケアマネ的視点

・自らけじめをつける姿は美しい。

・みじめに、必死に生きようとする姿もまた美しい。

・一生懸命な人って、美しい。

 

追伸:スナック北山のママへ

星に帰還されるとのこと……寂しい限りです。今までありがとうございました。またどこかでお会いできることを楽しみにしています。