ケアマネの独り言

ケアマネ的映画鑑賞記 ~寝ても覚めても〜

とあるお二人が大事件を巻き起こし全てを失うきっかけになった作品。予告編はコチラ(Youtube)。

柴崎友香原作のかなり独特なラブストーリーです。

 

大阪在住の朝子(唐田えりか)は、個性的な麦(東出昌大)と電撃的なひとめぼれをする。

つかみどころのない麦、であるがゆえに深く麦に溺れてしまう朝子だったが、麦はある日突然、朝子の前から姿を消す。

三年後、東京に引っ越していた朝子は、麦と同じ顔をした亮平(東出昌大)と出会う。忘れかけていた麦を思い出したくない一心で亮平と距離をとろうとする朝子だったが、二人は惹かれあい、共に暮らし始める。

それから五年、亮平との結婚を考え始めていた朝子のもとに麦が現れる。自分にそっくりな亮平を見て「やっぱり僕を待っていたんじゃない」と呟く麦は「一緒に行こう」と朝子に手を差し出す。

朝子はその手を取るのか。朝子は麦と亮平、どちらを選ぶのか……。

といった内容。

 

この映画の見どころはごくごく普通の女性である朝子が、麦によって全然普通じゃない行動に出てしまうところ、です。

バイクで事故った朝子と麦はこの後、路上で抱き合い、キスをします……。

麦は芸術家肌の、一般人からはその思考回路が全然想像できない人物。夜にパンを買いに行く、と出かけていって、朝まで帰ってこないような男です。

麦に惹かれる朝子は二人の関係にはまっていくのですが、その常軌を逸していく予感が見ていて不快でもあり、どこかうらやましくもあります。

 

そんな朝子が麦を失った痛みは相当のもの。ようやく忘れかけていたところに亮平という麦そっくりの人物が現れます。

麦に似た亮平を無視しようとするが全然できてない朝子……。

亮平は麦とは違い、ごくごく普通の男性。朝子は亮平とともに過ごすことで本来の自分を取り戻していきます。東京で友達を作り、東北にボランティアに行ったり……多分、朝子は本来そういう優しさを持った人物なんだと思います。

しかし、再びよぎる麦の(実は麦は芸能人になっていてCMなどを通じて時々朝子の前に姿を現すのです)……。

その時の朝子の動揺、行動の危うさ……やはり見ていてはらはらしますし、いらいらする、が故に魅力的

やがて麦と亮平のどちらかを選ぶ、という場面に至るのですが、その先は実際にご覧ください。

多くは言いません。ただ、たいていの人は朝子のことが嫌いになると思います。

まっすぐであるが故にいろんなものを失っていく朝子……。

 

しかし山田はこの朝子という人物、嫌いではありません。

朝子は良くも悪くも自分に正直だからです。

社会で生きている普通の人間は他者の目を意識して生きていかざるを得ません。他者から期待される自分というのは、社会の常識の範疇で行動する自分です。

社会の常識、それはその中にいる限りにおいては居心地のいい足かせです。しかし、足かせには変わりない。

その足かせをはずしてしまえる朝子を、憎たらしくもありまた憧れてしまうんだと思います。

ガチにリアルで足かせをはずしてしまった御両人……。

清々しいまでに全てを失ってしまった唐田さんと東出さんですが、この映画を見る限りとてもいい役者さんだと思いました。

失敗した人、過ちを犯した人を攻撃することは簡単。でも、それって何を生み出すのでしょうか……?

いつかまたお二人が活躍できるようになって欲しいと、こっそり願っている山田でした。

 

ケアマネ的視点

・他人に迷惑をかけない、それが社会人の常識。

・でも、迷惑かけちゃう時だってある。

・そういう人を許してあげる社会のほうがいいんじゃない?